2009年3月26日木曜日

アーチェリー全国大会熟女(!?)部門優勝!


二月にある全国インドア大会はおかあさんの誕生日のすぐ後。ということで、おかあさんこと私は今年はシニアからマスターズ部門にあがった。そして何とオリンピック・リカーブ「熟女」部門で優勝してしまったのだ。この大会は全国各地11箇所で2月から3月にかけて行われ、結果の集計が先週正式に発表された。日本のリカーブアーチェリー界に比べると全体のレベルは低いし、参加人数も少ないのだが、でもやっぱりうれしい。

私は大学生のころに1年だけアーチェリーをしていた。その後は忙しいし、近くに練習するところもなかったので、ご無沙汰していた。ところが、2年まえのチャーリーと妙ちゃんの7歳の誕生日に、おとうさんがおもちゃのアーチェリーセットを買ってくれた。でも、そのセットには指を守るフィンガータブや腕を守るアームガードなどが入っていなかった。それに矢も3本しか入っておらず、何回か遊んでいるうちに壊れてしまったのだ。そこで、私はグーグルでどこか近くにアーチェリー屋さんがないかどうか探したところ、30分ほど行った隣のニューハンプチャー州の町に一軒あるのを見つけた。

私はある日の午後、仕事を少しさぼって必要な物を手に入れるべく、そのお店ビッグ・アルズ・アーチェリーを探しに行った。お店のあるシーブルックの町は、少しうらびれていて寂しげな町。中央道りにお店はあるはずなのに、なかなか見つからない。何度か行ったり来たりして、やっとがらくた屋さんの裏にあるのを見つけた。窓は薄汚れて中は見えないが、一応アーチェリーメーカーのステッカーが窓にべたべた貼ってあるので、確かにここなのだ。本当にお店やっているのと少し不安に思いつつ、ドアを開けると中は薄暗い倉庫のような場所。床、壁、天井は木がむき出しの中で目に飛び込んできたのは迷彩色。迷彩色の弓、迷彩色の矢、迷彩色のブーツ、ジャケット、ズボン、帽子、迷彩色のバッグ、迷彩色のテント。

しばらく入り口近くで、目当ての物はどこにあるのかと店内を少し見回すと、これまた年代もののガラスカウンターの後ろにちんまりとすわっているおじさんが目に入った。私が「ハロー」というと、ちらと私を見て「おう」と無愛想に言って、また自分の手元に目を落とした。明らかに私を見て「よそ者侵入」の警告が体中から発散されている。あとで少しずつ分かったことなのだが、そもそもこの店には女性はほとんど来ない。その上、白人以外を見たことがない。自分で自分のことを「レッド・ネック」と呼ぶ白人男性が店員の100%、そしてお客さんの99%をしめているのだ。(あとの1%は私と何人かの子供たち)

で、このときは隣のガラクタ屋に来た中国人の女が迷い込んできた、くらいに思っていたらしい。店員は私のことを全く無視するフリをするので、私はかえって気が楽になってあちこち見て回ることが出来た。

ここで気がついたのは、このアーチェリー屋さんは弓矢で狩りをする人向けのお店だということである。すべての物が迷彩色であるのと、弓が数本を除いてすべてコンパウンドボウという滑車のついている猟に使われる弓であることから分かる。日本では猟銃で狩りはできても、弓矢では狩りはできない。だから、日本でアーチェリーといえば、スポーツなのである。でも、アメリカでは弓矢は立派な猟の道具である。特に、あまりお金に余裕のない人にとって、猟銃ほどはお金がかからず、秋口の鹿狩りの季節に鹿を1−2頭しとめれば冬のお肉はもう買わなくてもいいというありがたい道具なのだ。

お店の掲示板に、しとめた鹿や七面鳥、くま、ムースなどといっしょに誇らしげに写っているのはきっとお得意さんたちなのだろう。やっと隅の方の壁際に探していたフィンガータブとアームガードを見つけた。でも、弓の弦を張る時に使うT定規が見当たらない。そこで、カウンターの後ろのおじさんにきいてみようと彼に近づいて行った。「あの〜。T定規がほしいんですけど。」「え?なかったかなあ。取り寄せないとだめかもなあ。君、アーチェリーするの?」「昔ちょっとだけかじったんだけれどもやめました。でも、こどもたちに教えようと思って。」「へえ、そうなんだ。」それからはどこに住んでいるの(同じ町に住んでいることが判明)、どこ出身なの(アジア人は好きだと判明)、仕事は何しているの(彼は昔教師だったことが判明)、などなど延々と1時間以上話し込んでしまった。そのあげく「せっかくだから君ももう一回アーチェリー始めなよ。ほら、ここにある木の弓は$100だよ。しばらくこれを射ってみなよ。いらなかったら買い戻してあげるから。」というセールスピッチに負けて自分用の弓も買ってしまった。それから再びアーチェリーにのめり込んでしまったのである。不思議なもので、弓を持つと体がまだ射ち方を覚えていた。

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ローカル紙で全国優勝のニュースを取り上げることになったとき、私は、「ちょこっとどこか隅っこにでも載せてくれるのかなあ~」と思っていたのだが、なんとスポーツ欄の第一ページ、それもでかでかと出たのでびっくり!本文中何回も年齢を持ち出してくるものだから、町中の人間が私の年を知ってしまった。さっそく、学校からお話とデモンストレーションをしてほしい、知り合いの女性から教えて欲しいとリクエストが来ている。おかあさんはいつも「アーチェリーの楽しさをたくさんの人に知ってもらいたい」と思っているので、これを機会に少し教えるのもいいかもと思ってます。

記事はこちら。http://www.wickedlocal.com/ipswich/homepage/x1525910221/Local-resident-wins-national-archery-championship-in-division